後輩×先輩1827

□猛獣づかいツナ!
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今日最後の授業は体育。グラウンドでサッカーだ。
オレはトロいからこういった団体競技は気が重い。
どうせオレにはパスなんて回ってこないんだけど、止まってると先生に怒られるから皆の邪魔にならないよう適当にチョロチョロする。
ふと校舎に目を向けると、2階の教室に恭弥君の姿を見つけた。
窓際の1番後ろで退屈そうに頬杖をついてこちらを見てる。
オレが見ている事に気付いたのか小さく手を振ってくれた。
オレも振り返そうとしたその時。
コロリと足元に転がってきたボール。
誰かが弾いてしまったらしい。
オレの事なんて当然ノーマークだから、慌てた相手チームの奴が一斉にこっちに向かって来た。
でもゴールはすぐそこだったから。
後輩である恭弥君にいい所を見せたくて、オレはシュートを打つ為足を振り上げてボールを蹴った・・・・つもりだったんだけど。

見事に空振りして思いっ切り尻もちをついてしまった。
その間にボールは相手チームに持っていかれて。

「何やってんだよ、沢田!」

仲間の怒号に返す言葉もない。
本当に情けなくて涙が出そうになる。
そこでハッとして恭弥君を見たら。

笑っている。

授業中だから大っぴらに笑えないのだろう。
下を向いて机に肘をついて顔を隠して。
肩を揺らして笑っていた。

もうオレの先輩としての威厳なんてこれっぽちもない。
元からないのかもしれないけど。
『穴があったら入りたい』という言葉を身をもって体感した体育の授業だった――。



「うっ・・・もぅ、やぁ・・・痛いよ、恭弥君。許してぇ・・・・」

「だーめ。ホラ、こんなにグチュグチュになって・・・。
ここで止めたらツライのは綱吉先輩ですよ?」

痛みに潤む瞳で懇願しても恭弥君は止めてくれない。
むしろ楽しそう。絶対Sだよね。
陽は落ちて完全に夜の闇に包まれた男子寮のオレと恭弥君の部屋。
2階の1番奥、廊下の突き当たりにある他の2人部屋より広い特別室だ。
左右対称に机、本棚、ベッド、そしてクローゼットが備え付けられている。
ドアを入って右側がオレのスペース。
オレは今そのベッドの上で恭弥君に。

「いたぁい!うー・・・、痛いよ。恭弥君てば!」

体育の時に怪我した手を消毒してもらっていた。

「ハイハイ。もう終わりましたよ」

呆れたように言われて大きな絆創膏をペタッと貼られる。

「まったく・・・。なんで保健室に行かなかったんですか?」

「だって、たいした事ないと思ったから」

転んだ時に乾いたグラウンドで思いっ切り擦ってできた掌のすり傷。
別に平気だろうと水で洗っただけで放っておいたんだけど。
寮に帰ったら恭弥君に見咎められてしまった。
確かに血は止まってたけど傷口がグチャグチャになってて、恭弥君がすぐさま救急箱を取り出して消毒してくれたんだ。
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