後輩×先輩1827

□夏の始まり。
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雲雀恭弥。
オレより1学年下の学校一の有名人。
歌舞伎俳優みたいな凛とした美貌にスラリと長い手足。
首席で入学し、その後のテストも学年トップ。
おまけに武芸にも秀でていて、眉目秀麗、文武両道なんて言葉は彼の為にあるんじゃないかというほどだ。
けれどもそんな天が二物も三物も与えてしまった彼だが、いささか性格に問題あり。
孤独を愛し、群れる者を嫌う。
2人以上で固まっていようものなら即座に愛用のトンファーで殴り飛ばす乱暴者。
「咬み殺す」が口グセの凶悪凶暴の孤高の帝王。
彼は入学してからわずか3日で学校の全てをその手中に治めてしまった。

寮の部屋も同室になる者を次々に咬み殺して、とうとう1年生が全滅。
オレが2年生の犠牲者第1号になるはずだったのだが。
彼はオレに優しく接してくれて、仲良くなり、オレには『猛獣づかいツナ』という渾名が付けられて一躍時の人となった。

そしてちょっとしたスレ違いの末、自分の恭弥君への気持ちが恋情だと気付き、恭弥君もまたオレを好きだと言ってくれて――今はオレの恋人。
つまり今年の夏休みは初めての恋人と過ごす夏休みなのだ。
イタリアになんて行ってる場合じゃないわけだ。


自分のベッドに腰掛けようとすると、恭弥君がポンポンと自分の横を叩く。
聞かなくても『ここに座れ』って意味だと分かる。
だから恭弥君の側に近付いたら。

「うわっ!」

急に腕を掴まれたと思ったらグイッと引き寄せられて。
恭弥君の足の間に座る形になってしまった。

「ちょ、ちょっと恭弥君!」

恥ずかしくて立ち上がろうとしたけど、後ろから廻された両腕に腰をガッチリとホールドされて動けない。

「暖かくて気持ちいい」

背中にベッタリくっつかれて、肩口に頬ずりされて心臓がバクバクする。

「エアコンの温度上げればいいのに」

リモコンに手を伸ばそうとしたらギュウッと腰に廻された腕に力が入った。

「痛いっ!」

「そういう問題じゃないんですよ」
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