後輩×先輩1827

□はじめて。
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呼吸をするのも苦しいくらいの茹だるような暑さ。
梅雨が明けたと同時に連日の猛暑。
ヒートアイランド現象は深刻な環境問題だと再確認させられるような今年の夏。
それでもやっぱり夏休みはウキウキするもの。
ましてや恋人が出来たての夏休みなんてテンションが上がるに決まってる。

「恭弥君!海見えたよ!」

上がりっぱなしのテンションに加えて、久しぶりに見る海にオレは場所も忘れてはしゃいでしまった。
前の席に座ってるOL風のお姉さんにクスクスと笑われてしまって恥ずかしくなって俯く。
高2にもなって電車の窓から見えた海にはしゃぐなんて子供っぽすぎる。
少し落ち着こうと思ってペットボトルの水を1口飲んだ。

「興奮しすぎて海に落ちないで下さいね」

恭弥君に笑いながら揶揄されてしまった。
さすがに海に落ちるなんて事は無いと思う。・・・・たぶん。

今オレ達が向かっているのは湘南江ノ島。
1泊2日のプチ旅行。
電車にコトコト揺られて目的地はもうすぐだ。
江ノ島電鉄、通称江ノ電。
藤沢と鎌倉を結ぶレトロなグリーンとクリーム色の可愛らしいローカル線。
オレは小さい時に両親と江ノ島に来た事があったけど、その時は車だったから江ノ電に乗るのは初めて。
最終目的地の江ノ島水族館も初めて行く場所。
初めての恋人と初めての旅行。
なにもかもが初めての事ばかり。
興奮しない方がおかしい。

でも恭弥君はいつもと変わらず涼しい顔。
オレばかりが楽しくて恭弥君はそんな事ないのかな・・・

「僕だって楽しみですよ」

「え」

恭弥君の顔をチラチラ横目で見てたらいきなりそう言われた。

「な、なんで・・・」

オレの考えてた事がわかったの?

「顔に書いてありますよ。『楽しくないのかな?』って」

思わず顔を手で擦った。
そんなオレを見て恭弥君はクスクスと笑ってる。
この年下の恋人はいつも余裕綽々で、オレはいいように踊らされてるんだ。
でも、決して嫌だとかじゃない。
振り回されるのも楽しい、なんて思い始めてる今日この頃。
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