後輩×先輩1827

□はじめて。
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古都鎌倉の静かな静かな竹林のその奥に。
目的の場所はあった。

建っている場所といい、その雰囲気といいまるでかぐや姫の住む御殿のような佇まい。
いかにも知る人ぞ知るといった感じの隠れ家的高級旅館。
1泊ン万円はするであろう雰囲気に一般市民のオレは完全に飲まれていた。
平然とした顔で旅館へと入って行く恭弥君の後をギクシャクと追いかける。

「きょ、恭弥君。こんな高そうな所、オレ・・・」

浮いてる自覚が十分あったから不安になって恭弥君の袖を引っ張った。

「大丈夫ですよ。経営者は知り合いですから」

そう言われて玄関に入るように促された。
促されるまま中に入ると、綺麗な萌黄色の着物を着た女将らしき女性を中心にズラリと仲居さんが正座して待ち構えていて。

「いらっしゃいませ。ようこそお越し下さいました」

一斉に深々とお辞儀をされてしまって、思わず恭弥君の後に隠れる。

「お世話になります」

オレのように気圧される事なく大人の対応。
それに倣ってオレも小さく「お世話になります・・・」と言った。

「お部屋にご案内致します。お荷物をどうぞ」

仲居さんの1人がオレ達の荷物を持ってくれて、部屋まで案内してくれる。
長い廊下を歩いて、さらに錦鯉が泳ぐ池に架けられた渡り廊下を渡った離れ。
そこがオレ達が今夜泊まる部屋だった。
中に入れば、学校の教室よりも広いんじゃないかっていう畳敷きの部屋。
他にも和室と洋間が1部屋ずつあって。
表を見ればこの部屋専用の露天風呂。
しかも岩風呂と檜風呂の両方。
広いウッドデッキにはベンチが置かれて美しい内庭を眺めながら休憩できるようになっている。
明らかに特別室仕様の豪華な部屋。

茫然と立ち尽くしていると。

「すぐに女将が参りますので」

そう言って仲居さんが出て行った。

「恭弥君、やっぱりオレ・・・!」

この旅行を決めた時、宿泊代は心配するなと言われた。
知人のやっている旅館に泊めてもらうから、と。
その時は民宿みたいなものだろうかと思っていたのに。
まさかこんなしっかりとした高級旅館だったなんて・・・。
さすがに申し訳なさすぎる。

「心配しないで下さい。こことは祖父の代からの付き合いで、僕も子供の頃はよく祖父の静養について来ました」

慣れない高級感にモジモジと落ち着かないオレとは対照的に、恭弥君はお殿様みたいにドシリと座っている。
元々恭弥君は高貴な雰囲気を持っているからこの部屋にも馴染んでて。
さすがお坊っちゃま、と見惚れていると。

「失礼致します」

という声がして女将さんが入って来た。
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