後輩×先輩1827

□イロトリドリノセカイ
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生殺しとはよく言ったものだ。



ベッドに腰掛け読書に耽る。
と、同時にドアの外の気配にも気を配っている。
しばらくするとペタペタと廊下を歩く足音が聞こえてきたから本を閉じた。

「あ〜、いいお湯だった!」

そんな台詞を吐きながら、ガチャリと開いたドアから入って来たのは寮の同室である綱吉先輩だ。

「恭弥君も湯舟に浸かった方がいいのに」

かなり寒くなってきたよ、と心配げに言いながら水の滴る紅茶色の髪をタオルでわしゃわしゃ拭いている。
そんな事をしたら髪が傷んでしまうじゃないか!
まったく無頓着なんだから。
僕がタメ息を吐きながら手招きすると、綱吉先輩はちょこちょこと近付いてきて床にペタリと座った。
僕はドライヤーを取り出すと綱吉先輩の髪を乾かし始める。
もったりと水分を含んだ髪を根気よく乾かしていくと、元のクセの強い、でもフワフワで手触りのよい状態に戻っていく。

「はい。終わりましたよ」

乾かし終えてポンポンと軽く頭を叩くと、綱吉先輩は振り返ってニコッと笑って。

「ありがとう!」

と、嬉しそうに言った。
ああ、もう可愛い。
我慢できなくなって、風呂上がりでいつもよりも血色のいいぽってりとした唇にキスしてしまった。
軽いキスだったのに、ポッと頬を染める様子が愛らしい。

僕と綱吉先輩は寮の同室であると同時に、恋人同士でもある。

僕、雲雀恭弥は並盛学園の1年生。
今年の春に高校生になったばかり。
自分で言うのもなんだが、そこそこ良い家柄に産まれて、権力にも財力にも恵まれていたから幼い頃から自分勝手に生きてきた。
そのせいなのか――いや、生来の性質だと思うが孤独を愛し、群れを嫌う傾向にある。
天武の才にも恵まれていた僕は、暴力によって人を支配してきた。
当然のようにこの学校もわずか3日で支配し、風紀委員を乗っ取って応接室を占拠。
いたって順調。かのように見えるけれど。
確かに学校生活は問題ない。問題なのは生活面においてだった。

並盛学園は全寮制の高校で1、2年生は2人1部屋。
そもそも人間嫌いな僕が、なぜこんな全寮制の学校を選んだのか――。
それには色々と理由があるのだが今は置いておく。
とにかく1年生である以上、僕も同じ学年の奴と同室になった。
最初の1人は3日で音を上げて、それから次々に部屋替えを繰り返して。
とうとう同学年を1周し、いよいよ2年生に順番が回る。
特例で1人部屋に、という教師の申し出を蹴ってまで僕が待っていたのはこの時だ。
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