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□一緒にごはん
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そんなわけで綱吉は雲雀の好物を1つでも多く作れるようになろうと、今日もばあやの特訓を受けていた。
今までにも肉じゃがや鯖の味噌煮、茶碗蒸しなどの和食を雲雀好みの味付けでマスターしてきた。
そのレパートリーに出汁巻き卵が加わったのである。
綱吉はニコニコと卵焼きを切り分けて、綺麗に皿に盛り付けた。
そしてもう片方の卵焼きの端っこをオレも味見、と口に入れようとした時。
足にポフンと軽い衝撃を感じた。
何かと思って下に目をやれば、綱吉の腰にも満たない所に小さな頭。
いわゆる『天使の輪』が綺麗に浮き出たサラサラでツヤツヤの黒髪。
小さな子供が綱吉の足に抱きついてきたのだ。
「拓弥くん」
名前を呼ぶと子供が顔を上げた。
幼いながらも整った顔の白皙の美幼児。
頬がプクプクしてて、いかにもまだ乳離れして間もないですといった感じなのに、意志の強そうな黒曜石の瞳。
いつか見せてもらったアルバムの写真に写っていた綱吉の恋人の幼い頃に瓜二つの小さな子供。
「ちゅなよちっ、ぼくもたまごっ」
舌っ足らずに甘えられて、綱吉はへにゃりと相好を崩すと卵焼きを小さく切って子供の目線に合わせるようにしゃがんだ。
「拓弥くん、あーん」
「あーん」
素直に開いた小さな口の中に卵焼きを入れてやると、もくもくと口を動かしてからコクンと飲み込む。
「美味しい?」
「すっごくおいしー!もっとちょーだい?」
可愛らしく首をちょこんと傾げておねだりされて、ついほだされそうになるのをグッと堪える。
「ダメだよー。もうすぐ晩ご飯だからね。もうちょっと我慢して?」
諭すように言うと、コクリと頷く小さな頭。
「じゃあね、ごはんのときいっぱいたべていい?」
「いいよー。いっぱい食べてくれるの?」
「うん!3つたべる!」
本人は指で3を出しているつもりなのだろうが、4になってしまっている紅葉みたいな愛らしい手を突きだして言った。
そんな様子に子供好きの綱吉がデレデレと相好を崩しっぱなしにしていると、台所の入り口から声がかかった。
「こら、チビ太。台所は火や刃物を使うからチョロチョロするなって言ったろう」
言いながら中に入ってきた男はヒョイと拓弥の体を持ち上げる。
「ちがうもんっ、たくやなのっ!」
プクッとお餅みたいに頬を膨らませて自分の名前を訂正する拓弥を軽くいなして、男は綱吉に目線を移した。
「邪魔してごめんね、ツナ君」
「いいんです、壱弥さん。
オレが拓弥くんに味見してもらってたんですよ」
男の名は雲雀壱弥。雲雀家長男、綱吉の恋人の10歳年上の兄である。
「ほらっ、ちゅなよちだっていいってゆってる!
おろしてよっ、ぱぱ!」
壱弥の腕の中でジタバタ暴れる幼児、雲雀拓弥はもうすぐ4歳になる壱弥の息子なのだ。
つまり綱吉の恋人、雲雀恭弥の甥っ子である。
「だーめ。邪魔になるから向こうに行くよ。
それにしてもツナ君。エプロン姿可愛いね」
雲雀が選んだいかにも新妻が着そうな白地にフリフリのフリル付きエプロン。
それを壱弥に誉められて綱吉は照れながら頭を掻いた。
「か、可愛いくなんてないですよ・・・」
「可愛いさ。妻がいなかったら僕の嫁にしたいくらいだ」
「だめーっ!ちゅなよちはぼくのおよめしゃん!」
「君はまだ赤ちゃんだろう?」
「あかちゃんじゃないもんっ!」
子供特有の甲高い声で拓弥が喚き出して、台所は大騒ぎだ。
「はいはい、そこまで。
綱吉君にもばあやにも迷惑ですよ。本当に似た者親子ですね」
突然始まった親子喧嘩に綱吉がオロオロしていた所に差し伸べられた救いの手。