隣の席の佐久間くん
□隣の席の佐久間くん
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佐久間は源田を引き留める事を諦め、目の前の梓を見た。
梓は佐久間と目が合ってしまい、直ぐに逸らしてしまった。
『ご、ごめんね、佐久間君。』
梓の唐突な謝罪に佐久間はは?と声を漏らした。
「なんで紫苑が謝るんだ?」
佐久間は梓が謝る理由が分からずに疑問を問う。
『源田君が佐久間君を呼び出したりしたのは私の所為なの。その...、』
梓はなんと説明していいやら分からず口ごもる。
全部説明すればいい話だが、それをしてしまえば自分の想いがバレてしまう。
それは避けたい。
いや、知ってはもらいたいけど...まだ、そう告げる勇気はない。
『えっと、だから源田君を責めないであげて。悪いのは、私だから...。』
そう、返答するならこの言葉がぴったりだ。
流石に佐久間もこの程度の事で怒るような男じゃない。
寧ろ源田に感謝しているだろう。
決して口にはしないが。
「ああ。」
梓は佐久間の返事に胸をなで下ろした。
同時に本来の目的を思い出した。
『あ、のね...佐久間君。さっきの家庭科の時間にクッキー作ったんだけど...、よかったら、食べて貰いたいんだけど...。えっと、美味しくなかったら、捨てていいから...。』
最後の方は小さな声になってしまっていたけれど、梓は言い切った事に達成感を感じていた。
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