隣の席の佐久間くん
□隣の席の佐久間くん
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『お風呂と服、ありがとう...。佐久間君の家なのに、先にお風呂入っちゃってごめんね...。』
梓は申し訳なさそうに佐久間に謝った。
きゅっと借りたパーカーの裾を握る。
「気にすんなよ。」
軽く受け流すような言い方に彼なりの心遣いが見え隠れする。
軽く言われれば気にしている事が馬鹿馬鹿しくなる。
気にしていればお互いただのストレスになってしまうのだから。
「髪、ドライヤーでちゃんと乾かせよ。」
佐久間は梓にドライヤーを渡して脱衣場に向かった。
梓は佐久間の後ろ姿を見送り、渡されたドライヤーに目を移した。
それから視線を彷徨わせ、コンセントを探す。
窓の傍とドアの傍、それからキッチン側の壁。
梓は窓の傍のコンセントにした。
キッチン側の壁は一番遠いし、ドアの傍なら邪魔になってしまうだろうから。
ドライヤーをオンに切り替え、髪を乾かす。
桃色の髪が熱風に煽られる。
ひたすら耳に届くのはドライヤーの音だけ。
10分くらい経った頃だろうか。
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