薔薇の秘め事

□薔薇の秘め事
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葵は豪炎寺と一緒に稲妻総合病院に来ていた。



葵は治療を先にするではなく、豪炎寺と一緒に彼の妹の夕香の病室に来ていた。



「夕香...俺、勝ったよ...。」



そう言ったのは普段学校で見るのとは違う、優しい兄の姿だった。



落ち着いた大人の雰囲気を醸し出すその姿に、また別の感情が過ぎる。



結婚しても、きっとうまく生活できるだろうと。



...誰と...?



瞬間的に自分でない女を思い浮かべれば気分が悪くなった。



女を理由に彼と結ばれる事の出来る女が憎くなった。



同時に女に生まれる事が出来なかった自分に苛立った。



嫉妬すれば今度は自己嫌悪。



所詮は本物の女にはなれない。



私は紛いものの女なのだから...。



豪炎寺は肩にかけていたバッグを赤いカーネーションの入った花瓶のある棚の横に置き、黄色いチューリップの花を置いた。



赤いカーネーションの花言葉は母の愛・愛を信じる・熱烈な愛・哀れみ。



黄色いチューリップの花言葉は、名声・正直・実らない恋・望みのない恋。



彼が花言葉の意味を知っているならば豪炎寺は妹である夕香ちゃんに恋をしているのだろうか?



なんてありもしない事が浮かぶ。



花瓶の花を入れ替えようと豪炎寺が花瓶を右手の取れば。



「お兄ちゃん...、」



声が聞こえた。



眠っているはずの妹の夕香の声。



ずっと聞いていなかった、懐かしい声。







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