薔薇の秘め事

□薔薇の秘め事
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葵は奈良鹿公園の中にいた。



勢いに任せて出てきたのはかっこよかったが、戻るに戻れない。



葵はその場に座り込み、流れる小川を眺めた。



「そんな浅い川じゃ溺死なんて出来ないよ。」



気配もなく後ろから掛けられた声に驚き振り返った。



木の傍に一人の少年が立っていた。



「やぁ、葵。久しぶり。」



朱色の髪、真意の掴めないピーコックグリーンの瞳、不健康そうな肌。



どれも知っている。



『ぇ、ヒロト...?』



ポツリと小さく呟かれた声はヒロトに届いたらしく。



「うん、そうだよ。」



葵は立ち上がり、ヒロトに駆け寄った。



『ヒロト!』



そのまま葵はヒロトに抱き付いた。



「葵...?」



葵の顔は見えない。



『10秒だけ、』



耳元で聞こえた声。



『10秒だけ、このまま...。』



ヒロトは空いていた両手で葵を抱き締め返した。



「うん、分かった。」



抱き締め返された事に葵は安心した。



圧迫によって交感神経系を抑えられているのだろうか。







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