隣の席の佐久間くん
□隣の席の佐久間くん
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その健気な姿が可愛らしかった。
佐久間は梓の手からクッキーを手に取った。
心臓が五月蝿い。
パニック障害か心臓発作を起こしそうだ。
「紫苑...、」
『何?あっ、もしかしてチョコレートは苦手だった!?』
ごめんと謝りかけた時に佐久間の口から意外な言葉が返ってきた。
「いや、そうじゃなくて...食べるの勿体なくて...。」
梓は佐久間の言葉に一瞬きょとんとするが、可愛いななんて思ってしまった。
男の子に可愛いは失礼だけど...。
梓が音を立てて笑えば佐久間は何だか不機嫌そうな顔をした。
きっと馬鹿にされたと思ったのだろう。
『ご、ごめんね。そんな風に思ってもらえるなんて思ってなかったから嬉しくて...。』
そう言って梓は俯いた。
「紫苑、」
名前を呼ばれ、梓は顔を上げた。
「ありがとう。」
クッキー
(たった一言なのに、)
(すごく嬉しい。)
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