隣の席の佐久間くん
□隣の席の佐久間くん
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そんな姿が儚げで美しかった。
『わぁ〜、キレイ!!』
梓は夜空に咲く大輪の花に感嘆し、水色の双眸はじっと花火を見上げている。
佐久間は静かに橙色の隻眼で梓を見た。
今なら、告白出来るかも、と。
「紫苑、」
心拍の上昇を感じながらゆっくりと口を開いた。
名前を呼ばれ、梓が佐久間を見る。
梓はキョトンとした顔で佐久間を見返す。
ポツリポツリと肌に当たる水。
空を見上げればまたポツポツと顔や肩に当たる。
『ぇ、あっ雨!?』
パラパラ程度の雨が勢いを増し、土砂降りになる。
それまで花火に夢中になっていた人も花火に背を向け走り出す。
アナウンスで花火の中止を告げるのが聞こえた。
「紫苑!」
名前を呼ばれ、手を引かれるままに走り出す。
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