隣の席の佐久間くん
□隣の席の佐久間くん
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シャワーを止め、浴槽に栓をしてから蛇口を捻る。
お湯の温度は熱めに調節しておく。
佐久間は浴室のドアを閉めながらもう一度繰り返す。
「迷惑じゃねぇよ。」
今度は響かない声。
『佐久間君...ありがとう。』
佐久間は簡単に洗濯機と乾燥機の使い方を説明して、脱衣場に梓を残し出ようとした。
『待って!』
濡れた服の裾を掴んだ。
「紫苑?」
佐久間は不思議そうに梓を見た。
服はちゃんと用意したし、洗濯機と乾燥機の説明もしたし、今浴槽にお湯を溜めてる最中だ。
足りない事はないはずだ。
『帯、解いて欲しいの...後ろだからできなくて...。』
梓は佐久間を申し訳無さそうに見た。
足りないのは物じゃなかった。
「じゃあ、後ろ向け。」
梓は佐久間に言われた通りに後ろ向いた。
帯独特の擦れる音。
浴衣の帯を解けば締め付けられていた体が楽になる。
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