隣の席の佐久間くん
□隣の席の佐久間くん
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佐久間が肩にタオルをかけて脱衣場から出て来た。
長い桃色の髪は10分で乾くはずもなく。
一度ドライヤーを止めた。
『ぁ...佐久間君。』
黒いタンクトップにカーキのズボン。
タンクトップに落ちた水がその部分を色濃く黒にする。
「ちゃんと乾かさないと風邪引くぞ、紫苑。」
佐久間は梓の後ろに回り、時間差で垂れてきている毛先の雫を首にかけていたタオルで拭ってやる。
「ドライヤー貸せ。」
『え?ぁ、うん。』
淡白な佐久間の言葉に梓は佐久間にさっきまで自分が使っていたドライヤーを渡した。
それを受け取ると佐久間はドライヤーをオンに切り替え、自分の髪を乾かすのかと思えば梓の髪に熱風を当て始めた。
『あ、あの佐久間君...?』
梓の声はドライヤーの轟音にかき消されてしまった。
少しくすぐったくて、少し照れくさい。
大分髪も乾いた。
熱風が冷風に変わった。
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