刹那、涙に死色の紅桜
□刹那、涙に死色の紅桜
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鬼道の首の傷が薄くなってきた今日この頃。
鬼道の命を狙う人間を老若男女問わず殺した数は6。
私はあと何人の人間を殺せばいいのだろうか。
あと何人差し向ければ諦めがつくのだろうか。
そんなある日鬼道の思いがけない言葉に涙は驚いた。
「どうせ学校終わってこっちに来るなら、ここに住めばいいじゃないか?」
涙は棚に置いてあった花瓶を倒しかけたが、そこは元殺し屋。
持ち前の反射神経でなんとか倒さずに済んだ。
涙は小さく息を吐き、壁を凭れ腕を組んでいる鬼道を見た。
「何?もう一度言ってみてくれない?」
「だからここに住めばいいと言っているんだ」
聞き間違えじゃなさそうだ。
「それ本気で言ってるの?」
涙はたいして汚れていない濡れ布巾から手を離し、改めて鬼道を見た。
「ああ、本気だ。お前の両親が了承すればだが」
涙は両親の単語を聞き、顔を歪め俯いた。
「両親は去年交通事故で死んだ。私はたまたま運良く助かった」
空色の瞳が悲しげに伏せられた。
「そうか」
鬼道もまた視線を床に落とした。
涙はハッと思い出した。
鬼道もまた両親を亡くしているのだと。
「同じだね、」
涙は震える手で自分の腕を掴んだ。
ホントならこの手で抱き締め大丈夫だとでも言うべきかもしれないが、そんな事は涙には出来ない。
...何故鬼道に気を使わなきゃならないんだ、訳がわからん。
「桜...」
顔を上げた鬼道と目が合う。
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