刹那、涙に死色の紅桜

□刹那、涙に死色の紅桜
1ページ/3ページ






ある日涙は休暇を貰った、と思う。


思う、と言うのは鬼道に後をつけられてるからである。


涙はその事に気付いているが、気付かれている事を鬼道は知らないし、気付いていないだろう。


これでは休暇を貰ったとは言えない。


だが涙も馬鹿ではない。


持ち前の身体能力を使わない訳がない。


涙は女子トイレに入ると誰もいないのを確認し、トイレの窓から外に抜け出した。


いちいちストーキングされては困る。


変装でもしないと落ち着いて外を歩けやしない。


今のうちに変装グッズでも買っておこう。


涙は今日遊ぶ約束していた後輩こと、刹那にメールで予定より少し遅れる事を伝えた。


涙は男物の服や靴(シークレット)やウィッグを購入した。


荷物は家に一度置いて、変装してみた。


黒い髪、伊達眼鏡装着、露出は控えてバレないように。


鏡の前で一度確認。


「よし、問題ない。どこにでもいる普通の男の子」


そう言い聞かせて家を出た。


向かうは後輩のいるファストフードショップへ。


案の定刹那は見知らぬ男に絡まれていた。


そして刹那はそれを鬱陶しそうにしていた。


美少女と言うのもまた大変だなと思った。


涙は鬱陶しい男一人に蹴りを入れた。


そいつは前のめりになり、転んだ。


椅子が一緒に倒れ、店中の人間が好奇心を孕んだ瞳でこちらを向く。


姿を偽ればなんだってできると思えた。


そして涙は言葉を続けた。


「遅れてごめんね」


刹那は一瞬涙が誰か分からなかったが、声と瞳で直ぐに気付いた。




.
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ