刹那、涙に死色の紅桜
□刹那、涙に死色の紅桜
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ある日涙は休暇を貰った、と思う。
思う、と言うのは鬼道に後をつけられてるからである。
涙はその事に気付いているが、気付かれている事を鬼道は知らないし、気付いていないだろう。
これでは休暇を貰ったとは言えない。
だが涙も馬鹿ではない。
持ち前の身体能力を使わない訳がない。
涙は女子トイレに入ると誰もいないのを確認し、トイレの窓から外に抜け出した。
いちいちストーキングされては困る。
変装でもしないと落ち着いて外を歩けやしない。
今のうちに変装グッズでも買っておこう。
涙は今日遊ぶ約束していた後輩こと、刹那にメールで予定より少し遅れる事を伝えた。
涙は男物の服や靴(シークレット)やウィッグを購入した。
荷物は家に一度置いて、変装してみた。
黒い髪、伊達眼鏡装着、露出は控えてバレないように。
鏡の前で一度確認。
「よし、問題ない。どこにでもいる普通の男の子」
そう言い聞かせて家を出た。
向かうは後輩のいるファストフードショップへ。
案の定刹那は見知らぬ男に絡まれていた。
そして刹那はそれを鬱陶しそうにしていた。
美少女と言うのもまた大変だなと思った。
涙は鬱陶しい男一人に蹴りを入れた。
そいつは前のめりになり、転んだ。
椅子が一緒に倒れ、店中の人間が好奇心を孕んだ瞳でこちらを向く。
姿を偽ればなんだってできると思えた。
そして涙は言葉を続けた。
「遅れてごめんね」
刹那は一瞬涙が誰か分からなかったが、声と瞳で直ぐに気付いた。
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