刹那、涙に死色の紅桜

□刹那、涙に死色の紅桜
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すぐ傍で男が起き上がった音がした。


「テメェいきなりなにすんだよっ!!」


振り返れば男が拳を握るのを見た。


涙は足払いで体制を崩させて、もう一度男を地面にひれ伏せさせた。


「触るな、穢らわしい...ホント男って最悪...死ね」


涙は冷たく男を見下ろした。


初対面の奴にいきなり穢らわしいだとか最悪だとか死ねだとか言われれば誰だって傷付くだろう。


それを涙は易々と言った。


他人の姿を借りれば易々とこうも強気になれるのかと涙は初めて知った。


「いこ」


涙は刹那の手を握り、店を出ようとした。


しかし男は懲りずに涙と刹那に手を伸ばした。


「待てよ!」


涙は殺意のある空色の瞳で男を睨んだ。


男は小さく悲鳴を上げた。


涙は男をから視線を外し、今度こそ刹那を連れて店を出た。


「ごめんね、刹那ちゃん」


涙は店を出て少しのところで謝った。


「涙ちゃん先輩?」


刹那は首を傾げ、涙を見つめていた。


「私が遅れた所為で嫌な思いさせちゃたでしょう?」


涙は不安気な顔で刹那に言った。


「平気だよ。それよりもなんでそんな格好を?」


「ちょっと、ね」


歩道を渡る時、視界に入ったドレッドとゴーグル。


見覚えのある人物だ。


涙は心臓が強く脈打つのを感じた。


ときめきではない、緊張だ。


脈が加速する。


刹那との会話に集中したくても出来ない。


「涙ちゃん先輩?さっきから何を気にしてるの?」


涙は刹那からチラリと彼を見た。


ヤバイ、目があった、と思った時にはもう遅い。




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