刹那、涙に死色の紅桜

□刹那、涙に死色の紅桜
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涙が家に帰ると...いや、この表現は少しおかしい。


いつから涙は鬼道の家に対し帰ると使うようになったのだろうか。


まるでこの家が涙の家みたいだ。


それともこの家に居場所があるとでも思い上がっているのだろうか?と涙は内心冷笑した。


それほどまでに涙は鬼道の家に慣れ親しんでいた。


いつもの涙の姿を見るなり鬼道は涙に詰め寄った。


「話がある」


大事な話をする時、口を揃えて皆話がある、と言う。


ただ単純に話がしたい場合もあるかもしれない。


「私は話なんて何もない」


涙は短く返し、鬼道の脇を通り過ぎようとしたが、当然鬼道がそれを阻止する。


「お前俺に嘘を吐いていたのか」


失望したと言うような顔だ。


「本名なんて聞かなかったじゃない」


事実鬼道は一度も本名は何だとか聞いてきた事は一度もない。


「偽名があるなんて知らない」


「仕事上必要なのは分かってるんじゃないの?」


「だが俺に嘘を吐いたのは事実だ。それに恋人に本名を教えないとはどういう事だ」


鬼道の恋人と言う単語に涙は驚いた。


一瞬だけ言葉を詰まらせると、涙は唇を舐め、再び口を開いた。


「いつから私が貴方の恋人になったの!?貴方と私の関係は上司と部下の関係でしょ?妄想癖なんて勘弁して!」


「ただの上司と部下の関係なら昨日のセックスはなんだ」


再び涙の動きが止まった。


「あんなのは貴方が職権乱用したただの虚しいセックスよ!」




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