刹那、涙に死色の紅桜
□刹那、涙に死色の紅桜
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「俺にしがみついて何度も俺の名を呼んだのにか?」
鬼道は意地悪な言葉を言った。
「でも私は一度も貴方に好きなんて言ったことがない」
「なら言えばいいだろ」
「言えるわけないでしょ」
「何故だ、今更恥ずかしがっているのなら...、」
鬼道の言葉を遮り涙は叫んだ。
「違うっ!そうじゃないの!!」
涙は一度呼吸を整えると小さく息を洩らした。
「鬼道とは付き合えないの」
「男性恐怖症だからか」
いつも自信に満ちた鬼道らしくない声で言った。
その声色は自嘲気味とも悲しさとも諦めとも皮肉にも聞こえた。
「ううん、違う、違うの...。私の学校では男女交際が認められてないの。男なんて穢らわしい。みんなそう思ってる。それでも愛を知りたいと思うならば女同士で愛し合う」
そう、涙の学校には男なんていない。
学校の生徒はみんな女子生徒だし、教師だって女性だ。
そんな中で涙は男という種族を知らずに生きてきた。
「お前はどうなんだ」
それはつまりレズビアンなのかという事。
「ひどい事聞くね」
涙は質問に答えずに曖昧に返した。
「どうなんだ」
曖昧な涙の返答に鬼道は声に怒りを滲ませた。
もしも涙がレズビアンだとするならば鬼道との関係はただの遊びだという事だ。
むしろ涙の男性恐怖症を見る限りよりレズビアンに近いはずた。
「さぁ、どっちだろ。率直に言うとわかんない」
涙は素直にならない。
いつも涙は真実を言う事などなかった。
名前も、性癖も、何もかも。
ただ殺し屋をやっていたと言う事だけが事実である。
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