刹那、涙に死色の紅桜
□刹那、涙に死色の紅桜
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「同性愛なんて許さない」
鬼道は涙に近寄る。
涙も一歩下がる。
逃さまいと鬼道は涙の腕を掴んだ。
「ゃ、いやっ!」
涙は俯き、帰らないと駄々を捏ねる子供の様にその場に座り込む様に腰を引いた。
「逃げるな」
「やだ、触んないで!」
涙はフルフルと首を横に振った。
「好きだ」
「嘘つき、私がたまたまいたから抱いただけ!私はただの性欲処理器なんでしょ、ダッチワイフなんでしょ!」
「そんな事はない!」
「押し付けないで!好きならもっと優しくしてよ!好きな人の気持ちを優先するのが普通なんでしょ!?」
涙はヒステリックに叫んだ。
涙は声を殺して片手で顔を隠して泣き始めた。
涙の言葉に鬼道はショックを受け、力が緩んだ刹那、体が前のめりになった。
涙を押し倒すように倒れ込んだ。
咄嗟に涙を押し潰さないように着いた手に痛かった。
涙は背中への衝撃に一瞬だけ喉がつっかえるように感じた。
「すまなかった」
短い謝罪の言葉が何に対してなのか分からなかった。
涙は腕を退かし、鬼道を見上げた。
「そう思うなら誠意を見せてよ」
真の名
(嫌い嫌い触らないで、)
(真っ赤になっちゃうから。)
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