刹那、涙に死色の紅桜

□刹那、涙に死色の紅桜
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携帯の着信音に、涙はまたかと気だるげににポケットを探り、携帯の画面を見た。


液晶には*のマークのみ。


アスタリスクから珍しく電話がかかってきたのだ。


涙はてっきり鬼道からの電話だと思っていたので慌てて電話に応答した。


今度から鬼道の着信音変えとこうと思う。


だがそれはまるで鬼道だけが特別扱いみたいでムカつく。


いっその事曲をベートーベンの運命に変えてやる。


『桜?』


受話器の向こうからアスタリスクの声がした。


妙に真剣で、いつもの女口調ではなかった。


「どうしたの?」


『桜の両親の事故は偶然じゃない。意図的なものだった。そして犯人を突き止めた』


アスタリスクの言葉に涙は小さく震えた。


恐怖か、喜びか、激昂か。


携帯を握る手に力が入る。


「データをちょうだい」


『ああ、後で転送しておく』


「アスタリスク...」


本名でもないコードネームを呼べばなんだと返ってきた。


「どうして...いや、やっぱりいいや。ありがと」


涙は言いかけた言葉を馬鹿馬鹿しいと思った。


プライベートな付き合いはこれだけで充分だ。


深く詮索する必要も執着も固執も必要ない。


涙は通話を切った。




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