刹那、涙に死色の紅桜
□刹那、涙に死色の紅桜
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涙は鬼道に内緒で学校に行くことにした。
まぁきっとこの日にバレてしまう事は予測済みなのだが。
涙は編入手続きの書類を作り、学校の方には暫く休む事を連絡しておいた。
たった一人の女の為に何故こんな面倒な事を、どうせ殺すなら夜家に忍び込んで殺せばいいものを。
ああ、もう殺し屋は止めたんだっけ?
そうか、私は既にただの殺人者になったのか。
私利私欲で殺しをするなんて私はどれだけ落ちぶれたものか。
まぁ元々モラルなんてないのだから今更だが...。
「微妙な時期だが転入生を紹介する」
ドア越しに聞こえた声に涙はゆっくりと顔を上げた。
「佐倉、入ってこい」
男性教師の声に涙はドアに手を掛けた。
教室に入れば数十の目がこちらに向いていた。
人に見られるのは得意じゃないし、気分のいいものじゃない。
クラスにはお馴染みのゴーグルとドレッドが目立つ。
彼が私を見て驚いたのに私は気付いた。
「初めまして、佐倉泪です。どうぞよろしく」
単調に最低限の挨拶をして小さくお辞儀した。
そして顔をあげた時に見付けた...あの女を。
絶対に赦さない。
それはあの女が両親を殺した犯人だと分かった時に決めた事だ。
「佐倉は窓側の一番後ろの席だ」
涙は頷くと荷物を持ち直し、指定された席に向かった。
前の学校と全く異なる雰囲気、校舎、人。
全てが変わった。
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