刹那、涙に死色の紅桜
□刹那、涙に死色の紅桜
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休み時間には漫画の様に沢山の人に囲まれ質問責めになることはなかった。
むしろ涙を皆除外していた。
しかし一人私の席まで来た人物がいた。
勿論私はそれを予測済み。
「やぁユージン」
涙が冗談まがいに言えば鬼道は険しそうな顔をした。
「話がある」
短い言葉に有無を言わせない主の威厳を感じた。
「ついでに学校案内を頼むよ」
涙は貼り付けたような笑みを浮かべ、席を立った。
場所を移した二人の間になんとも形容し難い雰囲気が流れていた。
「何故ここにいる」
「何故?呼んだのは有人の方じゃん。嬉しくないの?」
涙は鬼道の質問(いや、むしろ尋問に近い)に対し、あらかじめ用意してあった答えを言った。
涙は鬼道がまるで親にあれば何これは何どうして?となんでも知りたがる子供のように振る舞う事を知っていた。
「何故そんな格好をしてる?」
何故かって?
そんなの私の両親を殺したやつがいるから変装してるに決まってるじゃないか。
復讐を果たす為気付かれる訳にはいかない。
だがそれを有人に教える気なんてない。
反対する事は目に見えてる。
「私、髪が紅いから目立つでしょ?私目立ちたくないの」
目立ちたくないのは事実だ。
「普段は気にしないのにか」
鬼道の言葉も一理あり。
だがここは違う。
まだ受け入れてくれるかなんてわからない。
私の髪色を見て皆恐れを抱く。
死色の紅桜なんて通り名があるものだから闇に手を染めている人間なら知らない人は多くはない。
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