刹那、涙に死色の紅桜
□刹那、涙に死色の紅桜
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「いや、別に。人として当然の事をしただけだ」
涙は顔も見ていたくないのでそっぽを向いた。
それを彼女は照れ隠しかなんかと思い、涙の横顔を見詰めた。
彼女は思った。
彼こそ自分の運命の王子様だと。
「私、魅麗、岩瀬魅麗」
知ってる、といいかけた言葉を飲み込み、涙は岩瀬魅麗と名乗る彼女を見下ろした。
見下すのはいい気分だ。
「僕は佐倉泪」
涙は口角を上げた。
魅麗にはそれが自分に笑いかけてくれてるように思えた。
そして同時に必ず手に入れてやると誓った。
そんな魅麗の心情を涙は知らないし、興味もない。
「佐倉、君...、」
「何?」
「ううん、何でもない」
涙はそう、とたげ返し、魅麗に背を向けた。
勘違いから始まる恋愛
(勘違いも、)
(甚だしい。)
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