刹那、涙に死色の紅桜
□刹那、涙に死色の紅桜
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グラウンドに行けばそこにはいつだか見たメンバーがいて。
円堂守とは一度話した事がある。
まぁ今再び顔を合わせても多分気付かないと思うが。
「今日からサッカー部マネージャーの泪だ」
視線が名乗れと言っていたので名乗っておく。
「あー、マネージャー希望の佐倉泪です。お世話になります」
涙は小さくお辞儀した。
「ケッ、男の癖してナヨナヨしやがって」
男の癖と言われても実際女なのだから仕方がない。
「聞こえてるよ。君のそういう先入観は組織にとってデメリットになるよ。君のような気の強い人間に従うって奴は多いいんだから、君が僕に嫌な先入観持つと回りに与える影響も大きく、僕へのイメージも嫌なものになっちゃうからやめてくれないかな?」
涙は笑みを貼り付けて言った。
「口先だけの嫌いなタイプだ」
「そうやって決めつけるのよくないって言ってるんだよ。馬鹿なの?」
死ぬの?まで言うと流石によくないから黙っておく。
やっぱ男嫌い?男性恐怖症?な所為か、男と認識した相手にはかなりキツイ。
これもまた私自身の先入観による差別だ。
自分こそ組織のデメリットになる。
「なんだと!?」
「誰かこのバカ犬に手綱をつけて」
「泪」
咎めるように言われた名前に涙はハッとした。
こうやって目の前の事に熱くなるのも、意地を張ってしまうのもまた欠点だ。
「二人ともやめろよ」
円堂の声に染岡は開きかけた口を閉じた。
「散歩中、飼い主に行きたい方向に行かせてもらえない犬みたいだ」
涙はふっと肩を竦めて瞼を閉じた。
それは涙自身の事か、或いは染岡の事か....或いは両方か。
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