刹那、涙に死色の紅桜
□刹那、涙に死色の紅桜
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「あの、ね...佐倉君、」
もじもじとしながら時々涙の様子を伺う魅麗。
何だ、トイレに行きたいのか?
「あ、僕生理用ナプキンとか持ってないんだ、ごめんね?保健室に行けば多分もらえると思うんだけど...」
涙の口からそんな言葉が出るとは予測していなかった魅麗は驚いた。
いや、男の口からなんの抵抗も前置きもなしに生理なんて生々しい単語が出るなんて誰も予測できなかった。
「えっ!?ちっ、違うよ!」
魅麗は慌てて首と両手を振って否定する。
「そうなの?」
涙にとって魅麗が生理かどうかなんてどうでもよかったが、魅麗の反応から何かあると考えていた。
「あのね...私、佐倉君の事が好きなの...!私と付き合って!」
魅麗は頬に朱を滲ませ、言ってきた。
は?と出掛けた言葉を涙は飲み込んだ。
好き?
この女が私を?
え、勘弁してほしいんですけど。
私レズビアンじゃないし、自分の両親を殺した相手愛せないんだけど。
え、これ普通の反応だよね?
「なんで?僕のどこがいいの?魅力なんてそんなに感じないと思うんだけど...」
「人を助ける理由が人として当然の事って普通に言える所。意志が弱そうに見えたけど、染岡君に平気で言い返せる強さ。私にとって佐倉君はとっても魅力的だよ...」
愛おしいそうに細められた瞳はまるで恋する乙女の姿。
魅麗の涙に対するイメージなんて彼女の思い込みであり押し付けられたイメージでしかない。
所謂性格は一日で変えられるのと同じで、性格が回りに対する振る舞いでしかないのと同じだ。
そういう風に見せてあるだけで本質ではない。
涙の本当の姿を受け入れるなどありえない。
だって彼女が好きなのは強くて優しくて親切で今時少ない当然の事が出来る人なのだから。
「へぇ、そうなんだ。でも答えはノーだよ」
涙は魅麗が自分を知っていると思い込んでいるのを知っている。
「なっなんでぇ!?みんな魅麗と付き合いたいって言うのにっ!!魅麗のどこがだめなのぉっ!!」
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