刹那、涙に死色の紅桜

□刹那、涙に死色の紅桜
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「岩瀬!どうし...」


声のした方を見ればそこにはグラウンドから駆けつけたのであろうサッカー部とそのマネージャー達。


ああ、そうか。


彼らから見れば十分襲っているように見える。


まんまと私は嵌められたのか。


「テメェっ!!」


やはり敵対心を真っ先に向けてくるのは染岡で。


染岡は魅麗から涙を遠ざけようと涙の胸倉を掴んだ。


魅麗が泣き顔を作り、自分で裂いた制服を胸の所で掴んで、サッカー部のメンバー達の元に駆け寄って行ったのを横目に見た。


誰もが魅麗を心配している。


それよりも涙は染岡にスタンガンを押し付けないかどうかの方が心配だった。


それが滑稽で笑えてきた。


「何笑ってんだよっ!!」


制服を掴む手に更に力が加わる。


ちょっと苦しいかな。


彼はきっと私が女であると気付いたら胸倉なんてセクハラになりそうな所を掴んだことに恥ずかしく思うだろう。


「いや、別に。ただね、愚かなのは知っているけど、自分が人間だと思っているなら相手を殴る前に理由を聞くんじゃないかと思ってね」


言葉がなくとも理解し合う事ができるなんて思っていないけど、こうもうまい具合にすれ違うと滑稽だと思う。


涙は薄く笑いを浮かべ、言ってやった。


「佐倉君がぁっ、私に好きって言ってきてぇっ!!断ったら襲われてぇっ!!」


鬱陶しい泣き真似に嫌気がさす。


よく言うよ。


大体誰もお前には聞いてないよ、岩瀬魅麗。


「なら誰も文句ねェよな」


染岡はグッと拳を握った。




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