刹那、涙に死色の紅桜
□刹那、涙に死色の紅桜
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「やめろ!」
鬼道の声に一斉に視線が集まる。
「コイツを庇うのかよ、鬼道」
「ああ、そうだ」
勇気を振り絞ってだされた言葉を無駄にするようで悪いが。
「有人、庇わなくていい。殴りたいなら殴ればいいよ」
嵌められたのなら新しい計画を練らなければ。
「ほら、コイツだっていいって言ってんだろ」
染岡が拳を振り上げた瞬間、涙は再び口を開いた。
「ただし、暴力事件なんて起こせば君の所為でサッカー部は大会に出る権利を失う。それに殴った君の内申書に暴力事件起こしたなんて書かれる事になるけど?」
涙はニヤリと口角を上げた。
染岡は舌打ちし、涙から手を乱暴に放した。
涙は地面に打ち付けられる前に気付かれぬ様軽く受け身をとった。
染岡はもう一度舌打ちをし、涙に背を向けた。
それに続いて涙を一度睨んでからぞろぞろと消えていくメンバー。
「くだらない」
涙はポツリと呟いた。
「お前が女好きなのは知っているがまさか手を出すとは...」
鬼道は涙の側まで来るとしゃがみ込み、皮肉っぽく言った。
「手なんて出してないし、巨乳は嫌いだよ」
「コンプレックスか?」
まるで貧乳と言われてる気分だ。
ムカつく。
「うるさい」
涙は鬼道を控え目に睨み付けた。
「大きくなるよう俺が手伝ってやろうか」
ニヤリという笑みに貞操の危機感を持った。
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