刹那、涙に死色の紅桜
□刹那、涙に死色の紅桜
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涙は午後を普段通りに過ごし、放課後になれば普通に部活に出る。
ただちょっと違うのは雷門の涙に対する態度だった。
まるで同情するかのように朗らかな態度だった。
こうも優しくされると調子が狂う。
「ドリンク作ってくるよ」
そう言って涙が立ち上がれば、雷門が涙を引き留める様に名前を呼んだ。
「私も手伝うわ」
その言葉に練習を見ていた木野と音無の視線を集めた。
不安そうな顔。
「いいよ、僕一人でできるから」
涙は小さく笑みを浮かべ歩き出した。
雷門はチラリと涙が消えていった方に目を向け、ゆっくりと立ち上がった。
「夏未さん?」
音無が立ち上がった雷門に顔を向けた。
「ちょっと佐倉君を見てくるわ」
雷門はニコリと微笑を浮かべ、涙の後を追いかけていく。
涙が部室でドリンクの粉を人数分に数えて2回目に回った時、後ろでドアが開いて閉まる音がした。
振り向かなくても匂いで分かった。
あんたけ甘ったるい香水を付けていれば誰だって分かる。
私香水は嫌いなんだ。
特にこの部室には不釣り合いな匂いだ。
匂いが混じって臭い。
涙は一度溜め息を吐いた。
「どうしたんだい、岩瀬さん?」
涙がゆっくりと振り返れば、予想通りだ。
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