刹那、涙に死色の紅桜
□刹那、涙に死色の紅桜
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所詮行動が涙でも存在は別物。
成績を気にせずに生きられる分気楽だ。
涙は鞄を持ち、保健室に向かった。
軽くノックし、失礼しますと声をかけながらドアを開けた。
椅子に座っていた年老いた女性がこちらに向き、ニコリと笑った。
「貴方が佐倉泪君ね」
「はい...気分が悪いのでベッドで休ませて下さい」
涙は鞄を持ち直し、ドアを閉めベッドの方へと向かった。
彼女は心配そうな顔をした。
「あら、大丈夫?」
涙は休めばすぐ治りますからと力なく笑みを浮かべ、距離を置くようにカーテンを閉めた。
鞄はベッドの脇に置き、ベッドに横になった。
「薬とかは持ってないの?」
「...薬...飲みましたよ。今はその副作用ですよ」
なんて癌のよく聞く知識を適当に言って枕に顔を埋めた。
5時間目が終わる頃、彼女は涙に声をかけた。
「佐倉君?私これから出張だけど一人で大丈夫?」
「大丈夫ですよ、誰かが押し入ろうとしたら箒で殴って尋問するんですよね?」
「それ間違った対処法よ」
すかさず彼女は言ったが涙じゃ話にならないと思った。
「もういいわ。佐倉君は寝てなさい」
彼女は保健室を出ていった。
涙はドアが閉まる音を聞き、体の向きを変え、鞄の中を漁った。
中には勿論授業に必要無いものだって入っていたりする。
例えばお菓子だったり、音楽機器だったりする。
涙は口にチョコレート菓子を放り込み、白い天井を見上げた。
ある昼下がりの初体験
(誰でもない存在って、)
(結構気楽でいいよね。)
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