刹那、涙に死色の紅桜

□刹那、涙に死色の紅桜
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涙はノックの後再びドアが開くのを聞いた。


先生が忘れ物でもしたのだろうか?


いや、先生ならノックはしない。


多分生徒だ。


涙はポケットの中のスタンガンに手を伸ばした。


勿論用心の為である。


足音が近付いてくる。


涙は寝ているフリをして、スタンガンを強く握った。


カーテンが開かれた。


「ここにいたのか」


そこにいたのは鬼道だった。


涙はスタンガンを握る手を放し、寝たフリをやめた。


「私じゃない場合を考えなかったの?」


涙はゆっくりと目を開け、不機嫌そうな顔をした。


「起きていたのか」


「起きてたよ」


涙は素早く答え、体を起こした。


「何しに来たの?」


「お前を探していた。また誰かにやられているのかと思ってな」


「その言い方、私が弱いみたい」


涙は顔をしかめた。


「弱くていい。俺が守るからな」


トクン、と心臓が強く脈打つ。


そういうことを堂々と言いいのける男は近年少なくなりつつある。


草食系男子が増加傾向の中これは今時珍しい。


まぁ、珍しいと言えば円堂君の熱血具合もだが。


あれはもう天然記念物とか世界遺産だと思う。


「有人はすごいね。殺し屋の...自分を殺そうとした私を愛すなんてね」


涙はまるで自嘲するように言った。


「お前だって俺を愛しているだろう?」


ゴーグルの奥の紅い瞳と目が合う。


「...さぁ、どうだろうね?」


涙はスッと目を細めた。


「なら試してみるか?」


ベッドに手を付いた鬼道と近くなる距離。


唇が触れる前に一言涙は音を発した。


「ちなみに先生には誰かが押し入ろうとしたら箒で殴って尋問するって言ってあるからね」






箒で殴って尋問



(本来ならもっと痛い尋問してあげてもいいよ?)


(遠慮する。)





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