刹那、涙に死色の紅桜
□刹那、涙に死色の紅桜
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染岡は舌打ち混じりにグラウンドに入り涙と少し離れて向かい合い、口を開いた。
「ルールは簡単だ。俺からボールを奪ってみせろ」
「猿でも分かる簡単ルールだね」
涙は軽く伸びをして、身体を解す。
「猿にはとれねェ所か触れられねェぜ」
染岡にはプロ意識のプライドとそれゆえの余裕があった。
涙は駆け出した。
気になるのはウィッグがとれないかだ。
サブマシンガンを全弾避けられるだけのスピードと二階から飛び降りても平気な肉体の強みがあるのだから染岡からボールを奪える可能性がないワケではない。
染岡は予測していたよりもずっと速い涙のスピードに驚いた。
染岡は慌てて対応した。
スピードがあっても技術のない涙にはボールを奪うのはかなりキツイ。
なかなかとれないとなると今度はイライラしてくる。
思わず足を引っかけて転ばせてやろうかと思った。
「佐倉君!貴方何しているの!?」
悲鳴に近い怒鳴り声。
見れば雷門がこちらに降りてくる所だった。
「あー、悪い」
涙は苦笑した。
誰もが初めて見る表情だった。
「いや、実は染岡君が」
「言い訳はしなくていいわ」
ピシャリと言われてしまった。
雷門は溜め息を吐いてから、呆れと心配の混じった言葉を言った。
「平気なの?」
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