刹那、涙に死色の紅桜
□刹那、涙に死色の紅桜
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中断されたことに不満そうな顔。
「なんだ急に」
「手、擦りむいたから」
「二階から飛び降りる奴が手を擦りむいたなんてな」
鬼道はちょっと嫌味っぽく言い、涙の手を掴み、立ち上がった。
「どこ行くの?」
「保健室だ」
引かれるがままに保健室に連れてこられ、手を洗わされる。
水が冷たくて気持ちよかった。
水を止め、ティッシュで水分を拭った。
鬼道を見れば手に消毒液を持っていた。
「自分でやるよ」
涙が消毒液を掴もうと手を伸ばせば逆に掴まれる。
「俺がやる」
涙は小さく息を吐き、消毒しやすいように手を広げた。
「傷口って実はあんまり消毒しない方がいいんだよ。傷口が治り難くなるから」
涙は鬼道が掌に消毒液をかけるのを見ながら言った。
鬼道の手が止まる。
傷口に消毒液
(ただ回復を先伸ばししているだけだ、)
(元の生活も傷も痕なく回復するのかは分からない。)
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