刹那、涙に死色の紅桜
□刹那、涙に死色の紅桜
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首筋を垂れる血が目につく。
鬼道は自分の首筋に触れ、軽く血を拭った。
「やってくれるな」
指先の赤が不謹慎にも美しいと思ってしまった。
赤が、紅い血が大好きだ。
私の髪と同じ赤が好きだ。
「私はプロだよ。貴方にはどうやら強い守護天使がついてるみたいだけど、」
涙は後ろ手でクローゼットを開けた。
右手には相変わらず鬼道の首筋を切ったナイフが握られ、矛先は鬼道を威嚇している。
「そんなのは関係ないから」
手探りでクローゼットを探るが、馴れた感触に触れる事はない。
なかなか触れられない事に苛々と焦りがピークに達した。
振り返って、クローゼットを開ければ中には目的のライフルはない。
はっと気付いた時には既に遅い。
ナイフは奪われ、床に押さえ付けられた。
もうダメだ、殺しを諦めた瞬間だった。
殺しの方法よりどうやって逃げるかを計画しなければいけなくなった。
「不様だな。また形勢逆転だ」
鬼道の言葉に頭が痛くなる。
セカンドキスで抵抗が無駄だと理解した。
同時に蝶が腹で舞うような感覚がして、それが妙に心地好かった。
拒絶よりも先に諦める
(何故か痛むこの胸。)
(誰か理由を教えて。)
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