刹那、涙に死色の紅桜
□刹那、涙に死色の紅桜
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「さっきまで俺にしがみついていた癖にか?」
耳元で言われた言葉に先程の情事を思い出し、カッと頬が熱くなった。
「顔が赤い」
「うるさい黙って」
涙はベッドから出ようとしたが、直ぐに鬼道に腕を掴まれた。
ベッドに引き戻される一歩手前で動きを止め、踏み留まった。
「お前が好きだ」
鬼道の今更な告白に涙はくるりと鬼道を振り返った。
目を見開き驚いた顔をしたが、直ぐに嫌そうに顔を歪めた。
「私は嫌い」
名前も知らない相手を好きだなんて馬鹿げている。
涙はベッドから抜け出し、衣服を整えた。
「荷物は棚の右から2番目だ」
涙は疑わしげに鬼道を見た。
「嘘じゃない」
彼には前科があるが紅い双眸を信じてみることにした。
涙は半信半疑で棚の右から2番目を開けた。
そこには見慣れた鞄。
今度こそ見付けた。
涙はそのまま中身を確認するとちゃんと中身は揃っていた。
「今日の所はこれが目的だったからね。殺さないでおいてあげるから」
涙は荷物を持つと窓から飛び降りた。
紅桜の純潔
(早く洗い流したかった、)
(体液でまみれたこの身体を。)
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