刹那、涙に死色の紅桜

□刹那、涙に死色の紅桜
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「なぁ、君もサッカーやるの?」


期待を含んだ瞳が涙を捉え、近付いてくるバンダナの少年。


涙はゆっくりとバンダナの彼を見た。


「違うよ、ただ見ていただけだから」


「ならもっと近くて見ていけよ!」


涙の手をバンダナの彼が掴んだ瞬間、涙はバンダナの彼の手を振り払った。


振り払われた事にバンダナの彼は驚き、涙は振り払った事に驚いていた。


そしてその理由が簡単に思い付いてしまった。


前日の行為が原因だ。


男性恐怖症。


男を知るには早すぎたのだ。


「ご、ごめんなさい。私男性恐怖症みたいなの。」


「そっか。いきなり手掴んでごめんな」


円堂は申し訳無さそうに謝った。


「ううん、大丈夫。こっちこそごめんね」


そういう顔をさせたい訳じゃないのに。


「俺、円堂守!雷門中サッカー部のキャプテンだ!」


そう言ってニッコリ笑った円堂は手を差し出したが慌てて手を引っ込めた。


円堂には直ぐに握手をする癖みたいのがあるらしい。


いや、握手をするのが普通なんだ。


ゴール前にいつもいるはずの円堂が居ないことに気付き、サッカー部のメンバーが集まる。


その中にはこの男性恐怖症と思わしき症状の原因がいた。


「何故ここにいる」


肩を掴まれ、体がピクリと強ばる。


こんな奴に私の対人関係を壊されて堪るかと涙は鬼道を睨み返した。


睨むと言ってもやはり男性恐怖症の所為か不快そうな顔程度で終わってしまう。


「鬼道やめろ!コイツ男性恐怖症なんだって!」






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