刹那、涙に死色の紅桜
□刹那、涙に死色の紅桜
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「へぇ、あんな笑いかたもするんだ?」
涙は嫌味っぽく鬼道に言った。
「春奈には、手を出すな」
鬼道は強く言った。
涙は少し目を細めた。
その瞳に憧憬の念が僅かに滲み出ていることに鬼道も涙自身も気付いていない。
「勿論だよ、私はモラルのある人間だから他人を巻き込んだりしない」
「モラルのある人間は人を殺したりしない」
鬼道ははっきりと言い切った。
その声に侮蔑の念が混じっていることに涙は気付いた。
涙はゆっくりと鬼道を見た。
「ならあなたはどうなの?私をレイプするのはどうなの?」
「....」
鬼道は答えない。
答えられない。
どんな理由があろうと自分を正当化する言い訳が見つからなかった。
それが妙にいやだった。
「今日はその話がしたくてきたわけじゃない」
涙は言葉を区切った。
その話題ではないことに不謹慎にも助かったと思った。
「どうして私に気付いたの?」
「どうしてそんな事を聞く」
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