刹那、涙に死色の紅桜
□刹那、涙に死色の紅桜
2ページ/2ページ
鬼道の言葉に涙は平然と答えた。
「今後の仕事に役立てようと思って」
それはまるで命を命と思ってないような言い方だった。
「もう殺しはするな」
殺しをして欲しくなかった。
純粋で穢れを知らない空色の瞳がいつか紅で穢れる所など見たくなかった。
好きな人が自分の嫌な事をして幻滅し、自分が傷付くのが嫌だった。
好きな人を嫌いになるが嫌だった。
そんなのはだだの押し付けだというのに。
鬼道は内心自嘲した。
「なら食事をするな」
「何を言って、」
何を言っていると言葉が続くよりも早く涙は口を開いた。
「貴方が言っている事はそういう事だよ。私は仕事で生計をたてているんだから」
涙は嫌そうに、不快そうな顔をした。
「仕事あってこその私。ルールに従っていたら今の私はいないんだよ。私は私をやめれないの」
涙はまるでそれが誇りのように堂々と言った。
相容れぬ関係
(名前も知らない彼女を、)
(嫌いになりたくなかった。)
.