刹那、涙に死色の紅桜
□刹那、涙に死色の紅桜
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鬼道は予想外の涙の行動に驚いた。
確かに渇いた音がした。
だけどそれは銃声ではなく、打たれた頬の音だった。
ピリッとした痛み。
鬼道は傾いた体勢を立て直すために右足を踏ん張った。
床が悲鳴を上げた。
一瞬父親が起きるんじゃないかと焦った。
「もっと早くに殺しておくべきだった」
そう言った涙は泣いていた。
結局涙は引き金を引けなかった。
私の心は知らずの内に引けない所まで来ていた。
「任務失敗(ゲームオーバー)、か...」
涙はゆっくりと双眸の空色の瞳を閉じた。
諦めたのだ。
涙は床に座り込んだ。
鬼道は涙を見下ろしていた。
その時、ポケットに入れていた携帯が着信を告げた。
最初はメールかと思った鬼道だが、鳴り止まない電子音に電話だと考えた。
涙はなかなか電話をとることをしなかった。
「携帯、鳴ってるぞ」
涙はゆっくりとポケットを探り、携帯を手に取った。
画面には非通知の文字。
涙は携帯を耳から離し、通話ボタンを押した。
『遅いぞ!!何故出なかったんだ!!』
いきなりの怒声。
涙はこれを見越して携帯を耳から離して通話ボタンを押したのだ。
涙はスピーカーモードに切り替えた。
『それで、鬼道有人は殺せたのか?』
先程よりか落ち着いた声だが、スピーカーモードの為、声は大きい。
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