刹那、涙に死色の紅桜
□刹那、涙に死色の紅桜
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「お前、名前は?」
「今更聞く?」
涙は自嘲を含んだ声で言い、隣にいる鬼道を見た。
「...桜」
名乗ったのは本名ではなくコードネームの方。
ターゲットに本名の教える人間なんていない。
まぁ鬼道有人はもうターゲットではないが。
「桜、どうして殺し屋をしているんだ?」
「私は...、」
どうして殺し屋をしてるんだろう?
最初はただの護衛係だった。
だけど危険を回避する為には殺しも必要だった。
失敗しても依頼人がお金や権力でもみ消してくれた。
今思えば過剰な護衛だと思う。
殺す必要があったのかと問われれば無いとも言い切れない。
判断するのは私じゃない。
私は言われた事をやっていればよかった。
意見なんて許されない。
沈黙する涙に鬼道は言えないのだと理解した。
「言いたくなければ言わなくていい」
「なら聞かないでよ」
涙は俯いた。
罪悪感に苛まれているのか、はたまた自分の失態に嫌悪しているのか。
「これからも殺し屋をやっていくのか」
問われた言葉にチラリと涙は鬼道を見た。
「私にどうして欲しいの?」
「殺し屋なんて止めて欲しい」
「へぇ、そう。それで?私は職を失ないただの女になって死ねと?ああ、違った。身体を売って性感染症になって死ねと言いたいのね!死んだら真っ先に貴方の所に出てやるんだからっ!!」
後先考えず自棄になって吐き出された言葉に鬼道は眉を寄せた。
「そんな事言ってない」
涙は溜め息を吐いた。
溜め息を吐きたいのはこっちだと鬼道は思った。
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