刹那、涙に死色の紅桜

□刹那、涙に死色の紅桜
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結果涙はバイト感覚で鬼道専属のメイドとなったのだ。


どう言い訳したのか知らないが父親から了承は得たらしい。


謎だ。


「桜」


名前を呼ばれて振り替えれば鬼道がいて、その手にはメイド服があった。


「何それ」


涙がひきつる顔で言う。


「メイド服」


鬼道はそんな涙の様子を気にもせずに平然と言った。


「まさか私が着るの?」


「俺が着るとでも思っているのか」


「いや、鬼道が着てくれればとっても可愛いと思うよ」


涙はなんとか逃れようと鬼道に言葉でメイド服を突き返した。


一瞬だけ鬼道がメイド服姿を想像してみた。


案外似合っているかもしれない、うん。


「本気じゃないだろうな?」


鬼道は疑わしげに涙を見つめる。


「いや着てみないとわかんないよ?」


「お前が着ないと意味ないだろ」


鬼道は強引に涙にメイド服を押し付けた。


まぁ、仕事上仕方ないだろう。


涙はメイド服を見てから鬼道を見た。


「なんだ」


「どこで着替えるの?」


「ここで着替えればいいだろ?」


平然とした態度で当たり前のように言われた言葉にデリカシーってものがないのかと思った。


「はぁ?ふざけないでよ」


「ふざけてなどいない。大体裸を見たんだから今更気にすることないだろう?」


刹那、涙の頬が熱くなり、羞恥に染まる。


「普通は気にするの!」


きゅっとメイド服を掴む手に力が入る。







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