刹那、涙に死色の紅桜

□刹那、涙に死色の紅桜
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着替えたものの、鏡を見て最終確認。


うん、やっぱり赤い髪は目立つ。


私の髪が正確にはなんと言うか知らないが。


赤、紅、緋、朱、スカーレット、蘇芳、ローズ、その他色々。


まぁあえて言うなら鮮血の色と言っておこう。


それゆえの死色の紅桜なんだから。


手ぐしで軽く髪を整えた。


変化は特にないが、しておいた方が落ち着く。


何故服のサイズが合っているかは謎だ。


涙は気持ちを切り替える為に一度瞼を閉じた。


ゆっくりと鏡に写る自分を見て、冷めた目をしているなと思った。


元々寒色系の色だが。


涙はそうして着ていた服を抱えてトイレから出た。


鬼道の部屋ををノックして入る時にはちょっと苦労した。


こちらを見た鬼道と目が合う。


「何?ウェイトレスみたい?」


早速涙は喧嘩腰。


「いや、よく似合っている」


憎まれ口の一つや二つ覚悟していたが全然違ったので拍子抜け。


だがきっと油断させたその後に何か仕掛けてくるに違いない。


「そう」


もっと嫌味ったらしく何か言ってくるかと身構えていたがどうやらそうではないらしい。


それで会話は終了。


「着ていた服どうすればいい?」


涙が鬼道に聞けば、鬼道はゆっくりと涙に近付いた。


近付く距離にやはり何かされるだろうと身構えたが、鬼道は涙の服を無言で奪い取り(奪い取るなんてそんな乱暴なものじゃなかったけど)、涙が今着ているメイド服が入っていた紙袋に入れた。


その入れ方が妙に丁寧で女々しいななんて思いながらも器用な奴だと思った。


涙の警戒は無駄な徒労に終わった。








警戒心+危機感=敵対心



(殺しに比べて面倒で、)


(安いバイトだと思う。)








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