刹那、涙に死色の紅桜
□刹那、涙に死色の紅桜
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「桜」
名前を呼ばれた。
本名じゃないけど。
「お前は俺のメイドだ。俺の命令には従え。」
命令に従うのは当然だ。
「はい」
涙は短く答えた。
言葉も瞳も態度も完全に冷めていた。
仕事なんだから下手なことは口にできない。
今まで通り当たり障りのないよう言葉を選ぶ。
鬼道との関係は主と従者。
ただそれだけだ。
「警戒するな、何もしない」
「...はい」
まるで別人のように対応する涙に鬼道は違和感を持った。
「いつもみたいに牙を剥き出さないのか?」
「いえ、それは有人様に無礼ですから」
ギクシャクした会話。
それが鬼道には避けられているようで嫌だった。
そうさせているのは自分なのだが。
「普段通りでいい、それからやはり有人でいい。畏まったお前はお前らしくない」
「...分かった」
涙は怪訝そうに、呆れたような顔をした。
「で、何がお望み?」
涙はパッと態度を変えた。
「何がだ」
「私を雇った理由だよ。何かあるんでしょ、天才ゲームメーカーさん?」
涙は嫌味ったらしく言った。
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