刹那、涙に死色の紅桜
□刹那、涙に死色の紅桜
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「殺し以外に出来る事があるのか?」
「失礼なやつだとか言われたりしない?」
「いや、ないな」
真面目に答える辺り腹立つ。
「私だって料理とか掃除くらい出来るよ」
プロじゃないから上手くはないけど、と後でどやされてもいいように一応言っておく。
「お前を雇った理由は単純だ」
刹那、腕を掴まれ、キスを迫られる。
「っ!!」
涙は反射的に鬼道の腕を捻りあげてしまった。
「ご、ごめん!!」
涙はパッと手を離した。
罪悪感が涙の中でぐるぐると巡っていた。
「護身術も出来るんだな」
鬼道は自分の肩を擦りながら言った。
その言葉が責めているように涙には聞こえた。
「ごめん、なさい...」
涙はもう一度謝った。
やってしまった。
完全に嫌われた。
....何故嫌われる事を拒む?
理由は分からないが、多分そのうち分かるだろう。
「まだ俺が怖いか?」
鬼道の問いに涙は顔をあげずにただ黙って頷いた。
「少しずつ、治していけばいい...」
鬼道の優しい言葉に涙は力なく頷いた。
こうやって心配されたり優しくされると、どうしていいかわからなくなる。
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