刹那、涙に死色の紅桜
□刹那、涙に死色の紅桜
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「ところで二回目なんだけど聞いていい?」
涙はあ、と声を上げてから鬼道を見た。
「セックスの事か?」
あまりにも平然と言うものだから腹が立つ。
だがこの程度でキレるなと自分を宥める。
「セックスから離れて」
涙は一度溜まった怒りを体外に出すように溜め息を吐いた。
「どうして私に気付いたの?」
この言葉は以前涙が突然雷門中に押し掛けた時の言葉と同じだ。
今でもよく覚えている。
以前はどうしてそんな事を聞くのかと聞かれた。
「いつもお前を探しているからだ」
今度はちゃんと答えてくれるらしい。
一瞬だけ心臓が強く鼓動を打った。
「暇人なんだね」
涙は胸の高鳴りに気付かないフリして憎まれ口を叩いた。
ふと目についた傷に涙は顔を不快そうに歪めた。
「首の傷...、」
涙の視線の先には鬼道は首。
そこには先日涙がナイフで切った傷がしっかりとできていて、それは外気に晒されていた。
傷口は今は瘡蓋で閉じて血は出ていないもの、治るのにそれなりに時間は掛かるだろう。
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