刹那、涙に死色の紅桜

□刹那、涙に死色の紅桜
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日はすっかり暮れて、高い位置に欠けた月が浮かんでいた。


そんな変わりないいつもの夜、黒い影が忍び寄る。


「そこで何しているの?」


涙はナイフを影に突き付けたまま言った。


その声は事務的な冷め方とは違う冷たさがあった。


完全に殺し屋の目だ。


影はゆっくりと振り返った。


その手には拳銃が。


それを確認すると同時に影の頸動脈を狙ってナイフを滑らせた。


影は声を発する前に息絶えた。


涙は絶命した男か女か分からない人間を見下ろし、携帯を取り出した。


「いつものお願い。場所は....」


涙は慣れた様子で電話する。


遺体はいつもの始末屋に任せれば問題ない。


涙は電話をポケットにしまうと一度だけ周囲を確認してからその場を去った。


この調子で学校にいつまで通えるだろうか?


殺しをしても給料は出ない。


依頼人が知らないのだから仕方ない。


だからと言って知られるのも困る。


そして何よりも知られるのが怖い。


知られればきっと、私はここにはいられない。


....いられない?


まるでここにいる事を望んでいるみたいじゃないか。


いつからそんな風に考えるようになっていた?


暫くすれば指定した場所に成人男性が現れた。


成人男性と言っても涙の中の判断基準だ。


彼の名はアステリスク。


勿論本名ではない。





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