薔薇の秘め事
□薔薇の秘め事
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自分より低い体温でも今の葵にとってはヒロトの温もりは暖かかった。
10秒と言ったのにも関わらず、30秒はおおいに過ぎていた。
ゆっくりと体を離し、葵はありがとと小さくお礼を言った。
「死にそうな顔してたよ。何かあったんでしょ?」
『自殺したくなる程の事じゃない。』
葵は俯いた。
「俺が相談に乗るよ。」
『...チームメイトと喧嘩した、って言っても向こうはチームメイトと認めてくれないけど。』
葵は肩を竦めてみせた。
葵なりの強がりだったりする。
「裏切ったの?」
『完全な思い込みよ。』
「でも逃げたら図星みたいじゃないかな?」
ヒロトの言葉に一理ある。
疑いが深まり確信に近付く。
余計に戻りにくいじゃないか。
葵は俯く。
「やめちゃいなよ、打倒エイリア学園なんて。」
葵は顔を上げ、ヒロトの真意の掴めないピーコックグリーンの瞳を見つめ返した。
一瞬で目の前の彼が別の人間へと変わった。
冷たくて、深い。
「止めて俺の所に来てよ。」
彼は誰だ...?
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