薔薇の秘め事
□薔薇の秘め事
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『ヒロト...?』
疑心混じりに名前を呼べば彼はハッと我に返り、力なく笑い、小さく呟いた。
「ゴメン...。」
それが何に対しての謝罪なのか判断は出来なかった。
遠くから聞き慣れた声が聞こえて来た。
葵が声の聞こえた方を見た瞬間、すぐ近くでじゃあね、と聞こえてヒロトを見ればそこにヒロトはもういなかった。
「葵!」
傍にまで来た友人の声に見向きもせずにただヒロトがいた場所を見つめる。
消えた、そんな筈はない。
でもそんな神隠しみたいに消えるなんて...、
「葵?」
もう一度名前を呼ばれて葵は鬼道をゆっくりと見た。
「大丈夫か?」
『大丈夫、なんでもない。』
葵は目を閉じて緩く首を左右に振り、呟いた。
鬼道は黙って葵の手を引き、来た道を歩き出した。
『ちょっ、有人?』
「戻るぞ。」
『何でっ?』
「お前は宇宙人の仲間か?違うだろ。なら問題ない。」
勝手に質問して勝手に答えられた。
私何も言ってないのに。
「...すまない、葵。」
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