薔薇の秘め事
□薔薇の秘め事
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窓から見えていた高層ビルはやがて木に変わる。
葵はチラリと数時間前まで豪炎寺が座っていたハズの席を見た。
だれも座っていない。
いつもなら何故こんな森林地帯に来たのか考えるが今はどうもそんな気分にはなれない。
豪炎寺の離脱は葵に予想以上の大打撃を与えた。
化学薬品という名の酒に溺れたくなる大人の気持ちがよくわかる。
解決にはならないが一時的には逃れられる。
イナズマキャラバンが停車し、立ち上がった瞳子監督が言う。
「狭いバスの中に乗ってばかりじゃ体が鈍るわ。トレーニングをしましょう。」
しかしトレーニングメニューを作ったのが瞳子監督だと言えば真っ先に染岡が反発して自分もと反発者が出て結局自主トレとなった。
染岡達はまんまと瞳子監督の作戦に引っ掛かったのだ。
葵は肩を竦め、イナズマキャラバンを降りた。
葵はリフティングしながら移動した。
勿論落としやしない。
終わりが見えてこないので木々の間を縫うように走る。
八つ当たりに、力任せにボールを蹴れば木に反動してまた戻ってくる。
八つ当たりでもちゃんとボールが戻ってくるのは葵の技術だ。
それを何度も繰り返し繰り返し蹴る。
終いには木が土から離れ、倒れた。
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