薔薇の秘め事
□薔薇の秘め事
3ページ/3ページ
頑張ったね、お疲れ様...馬鹿にしてる?
肝心な時に何も言えない。
『怪我しなくて良かった...、』
そう言うしかなかった。
自分が怪我している事をまるで水戸黄門のように紋所にして、自分の方が無力だったと見せ付けて悲劇の登場人物を演じた。
そうして彼に何も出来ない私よりも自分の方がマシだと思わせるしかなかった。
そうする事でしか彼の心を浮上させる方法が思い付かなかった。
葵はきゅっと吹雪の手を握った。
吹雪は困ったように笑った。
きっと彼は怪我している私を憐れんだのだろう。
そんな目で私を見るな。
そうなる事を望んだのは私だと言うのに。
怒りと罪悪感。
それだけが私の中に低空飛行する感情。
闇が芽生える
(もっと力を、もっと力がいるんだ。)
(それを止める事は出来ない。)
.